『徳島県立博物館ニュース』52号より
海部郡牟岐町の沖には1周4キロメートル程の小さな島、出羽島があります。この島には博物館からも課題調査のため何人か学芸員か訪れ、調査のときに はお世話になっています。その調査のとき
に、地元の方とこんな話になりました。出羽島では「蘇民将来」の札、昔から魔除け、疫病除けと
して門口につけて いるからあたり前だと思ってつけているのですが、そんなに珍しいものなのです
かと。
「蘇民将来」の札そのものは広く各地でみられるものなのですが、ここ で少し注目してみましょう。
出羽島のほとんどの家では、門口にダイダイといっしょに紙札が付けられています。これを出羽島
では、モンブリ(門振り)といいます。モンブリにはこう 書かれています。「蘇民将来子孫門也」。
そして、梵字でカーン(不動明王)と書かれ、紙札下には星印が書かれ、陰陽道の大家、阿倍晴明
の家紋を思わせるも ので、邪気祓う効果があるとされます。出羽島のこのモンブリの出所は檀那寺
と関係があるようです。出羽島のほとんどの家が牟岐町の満徳寺という真言宗の寺の檀家です。
年末には、この札を 満徳寺から配られるのだそうです。もらってくるとすぐに正月の注連飾りと一
緒に門口に取り付けるわけです。出羽島では小正月1月15日の朝、サギッチョで 注連飾りの方は燃
やしてしまうのですが、そのまま残されるのがモンブリとその飾りとしてのダイダイだそうです。
こうして次の年の正月までそのまま家の門口 には札が残されるわけです。
県内では「蘇民将来」の紙札を配布するのは由岐町、日和佐町、牟岐町など県南の真言宗寺院です。
県南地域には広く分布していると考えられるのです が、これを1年間門のところにかけておくのは
出羽島の特徴かもしれません。
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